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表面利回り12%も儲からない?IRRで見抜く「10年後も利益が残る物件」

投稿日:2026.07.17

収益物件を探していると、どうしても目に入るのが「表面利回り」です。

例えば、次の2つの物件を比較した場合、どちらに魅力を感じるでしょうか。

  • 表面利回り12%の築古アパート
  • 表面利回り7%の築浅アパート

数字だけを見ると、多くの方が表面利回り12%の物件を選びたくなるかもしれません。

しかし、不動産投資で本当に重要なのは、購入時の利回りではありません。

保有期間中にいくら手元に残り、最終的にいくらで売却できるのか。

この投資全体の結果を判断するために役立つのが、IRR(内部収益率)です。

表面利回りは「入口」の数字にすぎない

表面利回りは、年間家賃収入を物件価格で割って計算します。

例えば、物件価格5,000万円、年間家賃収入500万円であれば、表面利回りは10%です。

計算が簡単で、物件同士を大まかに比較するには便利な指標ですが、次のような費用は考慮されていません。

  • 固定資産税
  • 管理費
  • 共用部の電気代や清掃費
  • 入退去時の原状回復費
  • 空室期間
  • 設備交換や大規模修繕費
  • 借入金の返済
  • 購入時・売却時の諸費用

つまり、表面利回りが高くても、実際の手残りが多いとは限りません。

特に築年数が経過した物件では、給湯器、エアコン、屋上防水、外壁塗装、給排水設備などの修繕が重なることがあります。

購入時には高利回りに見えても、数年後に多額の修繕費が発生すれば、当初想定していた利益は簡単に失われてしまいます。

 

IRRは「購入から売却まで」を評価する指標

IRRは、次のような資金の流れをまとめて評価します。

  1. 購入時に投入した自己資金
  2. 保有期間中の年間キャッシュフロー
  3. 将来発生する修繕費
  4. 借入金の返済状況
  5. 売却時に手元へ残る金額

表面利回りが「購入時点の収益性」を見る数字であるのに対し、IRRは「購入してから売却するまでの投資全体」を見る数字です。

不動産投資では、毎月の家賃収入だけでなく、最後にどのくらいの金額で売却できるかによって、投資結果が大きく変わります。

そのため、IRRを計算する際には、売却まで含めた出口戦略が欠かせません。

 

高利回り物件と築浅物件を比較してみる

ここでは、同じ1,200万円の自己資金を投じる2つの投資を比較します。

年間キャッシュフローは、運営費と借入返済後、税引前の金額とします。

項目 物件A 物件B
物件の特徴 築古・高利回り 築浅・駅近
投入する自己資金 1,200万円 1,200万円
年間キャッシュフロー 120万円 90万円
5年間の累計キャッシュフロー 600万円 450万円
5年後の売却手残り 1,100万円 1,400万円
IRR 約8.6% 約10.2%

保有期間中のキャッシュフローだけを見ると、物件Aの方が年間30万円多く残ります。

しかし、5年後の売却まで含めると、物件BのIRRが高くなります。

物件Aは築年数の経過によって売却価格が下がりやすく、物件Bは立地や築年数の優位性によって価格を維持しやすいという想定です。

このように、不動産投資では、

「毎年たくさん入ってくる物件」と「最終的に多く残る物件」は、必ずしも同じではありません。

表面利回りだけでは見えなかった違いが、IRRで比較すると明確になります。

※上記はIRRの考え方を説明するための簡易的な試算です。実際の投資判断では、税金、融資条件、修繕費、売却費用などを個別に反映する必要があります。

 

IRRは売却価格の設定で大きく変わる

IRRを計算するうえで、最も注意しなければならないのが売却想定価格です。

売却価格を高く設定すれば、IRRはいくらでも良く見せることができます。

例えば、5,000万円で購入した物件について、「10年後も5,000万円で売却できる」と仮定すれば、高いIRRが出るかもしれません。

しかし、その想定に根拠がなければ、投資分析としての意味はありません。

売却価格を考える際には、少なくとも次の項目を確認する必要があります。

  • 売却時点の築年数
  • 周辺の成約事例
  • 土地価格
  • 建物の残存価値
  • 売却時の想定家賃
  • 入居率
  • 金融機関の融資姿勢
  • 次の購入者が求める利回り
  • 解体費や大規模修繕の可能性

特に収益物件の価格は、将来の家賃収入と期待利回りによって大きく左右されます。

家賃収入が年間500万円の物件でも、購入希望者が期待する利回りが変われば、価格は次のように変化します。

  • 利回り7%で評価される場合:約7,140万円
  • 利回り8%で評価される場合:6,250万円
  • 利回り9%で評価される場合:約5,560万円

期待利回りが1~2%変わるだけでも、売却価格には大きな差が生じます。

現在の価格だけでなく、将来その物件を購入する人が「どのように評価するか」まで考えることが重要です。

 

IRRが高ければ、必ず良い物件なのか

IRRは有効な指標ですが、IRRが高いという理由だけで購入を決めるのも危険です。

IRRは、入力した条件をもとに計算されます。

そのため、次のような楽観的な設定をすると、実態以上に高い数字が出てしまいます。

  • 空室率を低く設定している
  • 家賃下落を想定していない
  • 修繕費が少なすぎる
  • 金利上昇を考慮していない
  • 売却価格を高く設定している
  • 売却時の仲介手数料などを入れていない

大切なのは、ひとつのIRRだけを見ることではありません。

次のように条件を変えた複数のシナリオを比較する必要があります。

  • 標準シナリオ

現在の入居率や家賃水準が、おおむね継続すると仮定します。

  • 悲観シナリオ

家賃下落、空室増加、金利上昇、修繕費の増加、売却価格の下落を反映します。

  • 楽観シナリオ

家賃の維持、稼働率の改善、想定以上の価格での売却などを反映します。

不動産投資では、楽観シナリオで利益が出ることよりも、悲観シナリオでも資金が回るかどうかが重要です。

 

高利回り物件で特に確認したいポイント

表面利回りが高い物件には、利回りが高くなっている理由があります。

単純に割安な優良物件である可能性もありますが、次のようなリスクが価格へ反映されている場合もあります。

  • 家賃が相場より高く設定されている

現在の入居者が退去した後、同じ家賃で募集できるとは限りません。

購入前には、現在の契約家賃だけでなく、周辺の募集家賃や実際の成約水準を確認する必要があります。

  • 修繕が先送りされている

外壁や屋上、給排水管などの修繕を行っていない物件は、購入後すぐに大きな支出が発生する可能性があります。

「今まで修繕費がかかっていない」ことは、必ずしもプラス材料ではありません。

修繕が不要だったのか、単に先送りされているのかを見極める必要があります。

  • 売却できる相手が限られる

違法建築、再建築不可、接道条件、用途地域、耐用年数、融資期間などに問題があると、次に購入できる人が限られます。

高利回りで運用できても、売却時に融資がつかなければ、現金購入者へ安く売却せざるを得ない可能性があります。

  • 特定の企業や学校に需要が依存している

近隣の工場、大学、病院など、特定の施設に入居需要を依存している物件にも注意が必要です。

施設の移転や閉鎖によって、賃貸需要が大きく変化することがあります。

 

物件提案を受けたときに確認したい5つの数字

物件資料を確認するときは、表面利回りだけでなく、次の5つの数字を確認してみてください。

  1. 購入諸費用を含めた総投資額
  2. 運営費を差し引いた実質収益
  3. 借入返済後の年間キャッシュフロー
  4. 保有期間中に必要となる修繕費
  5. 売却費用と借入残債を差し引いた売却手残り

この5つが分かれば、購入から売却までの資金の流れが見えるようになります。

反対に、この数字が整理されていない状態でのIRRは、根拠の薄いシミュレーションになりかねません。

 

「いくら儲かるか」より「何が起きても耐えられるか」

不動産投資では、将来を完全に予測することはできません。

空室が増えることもあれば、修繕が予定より早く発生することもあります。金利や売却時の市況も変化します。

だからこそ重要なのは、最も利益が出る計画を作ることではなく、多少条件が悪化しても資金繰りが破綻しない計画を作ることです。

表面利回りは、物件を探すための入口としては便利です。

しかし、最終的な購入判断では、実質収益、借入条件、修繕計画、売却価格、自己資金の回収期間まで確認する必要があります。

表面利回りは物件の一部分を示す数字。
IRRは不動産投資全体の結果を考えるための数字です。

ワイズプランニングでは、物件価格や表面利回りだけではなく、保有期間中のキャッシュフロー、融資条件、修繕リスク、出口戦略まで含めた収益分析を行っています。

「紹介された物件が本当に利益を残せるのか確認したい」

「保有中の物件を売却すべきか、持ち続けるべきか比較したい」

「自己資金を効率よく活用して、次の物件購入につなげたい」

このようなお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

 

ライター:南 浩己 AM事業部 部長
     

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